ろうきん SDGs Report 2023
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16就労支援事業「HUBchari」と夜回りでの配布の様子。生まれ育った環境によって生じる社会的不利改善点を洗い出し、真に必要なサポートを生み出す 理事長の川口さんは、通学路の大阪・新今宮駅でホームレスの人がたくさんいる光景を目の当たりにし、14歳で炊き出しのボランティアに参加。中学・高校とホームレス問題に関わるなかで、当時、大阪市内で毎年200人以上が路上で命を落とす現状に、「炊き出しや物資を配る活動だけでは問題の解決につながっていない」もどかしさを抱えていた。「路上からでも働ける仕事があったり、ゆっくり休める個室が用意されていたり、ご飯がいつでもたべられたり。そんな場所があったら問題は少し解決するのでは」との思いから、大学在学中の2010年に「Homedoor」を設立した。 シェアサイクルによる就労支援事業「HUBchari」(ハブチャリ)、夜回り活動「ホムパト」、緊急一時宿泊施設「アンドセンター」、温かい食事を提供するカフェ「おかえりキッチン」等と、その支援メニューは多様だ。「真に必要なサポートを生み出す挑戦を『6つのチャレンジ』と呼び、PDCAを毎年きちんと回し続けることで、新たなアイデアが生まれ続けています」と話す川口さん。これらの活動を支える寄付額は年間7,000万円に及ぶ。 新規相談を含め、月間で約100人の相談者と関わるが、その半数近くが30代以下。相談者の方へ「Homedoorに来る前にどんな場所にいたか」を尋ね、その答えから、Web広告やSNSでの発信、ネットカフェでのポスター掲示などのアウトリーチ(支援が必要な人に情報や物資を届ける活動)を展開する。「若い相談者の多くは、虐待の経験や児童養護施設の出身など、成育環境に課題を抱えています。トラウマや精神的なしんどさから仕事が長続きせず、環境に圧迫され、ゆっくりと自分のキャリアを考える機会をなくしてしまっている印象です。」再出発に向けて、「相談者が選択できる」多様な選択肢を提供 Homedoorでは、成育歴や職歴などを含む丁寧なヒアリングを行い、住まいや公的制度、就職先の紹介など、複数の選択肢を提案する。働く場は、「HUBchari」の仕事や企業からの受託業務、居酒屋や介護施設等での中間的就労など多岐にわたる。「まずは個室のアンドセンターに宿泊し、多種多様な提案の中から、本人に緊急一時宿泊施設「アンドセンター」。個室を完備し、思い思いに過ごせる団らんスペースもある。選んでもらうことを大切にしています」と川口さんは言う。 一方、アンドセンターは満室が続き、また、バリアフリーな設備を必要とする方、子どもを含む家族での受け入れなどが難しい状況にあった。そこで、2023年4月、近畿ろうきんの融資制度を利用し、新たな居住支援施設「アンドベース」を開設。生きづらさを抱える若者や母子世帯、一般就労が難しい高齢者や障がいのボーダー層など、長期的なサポートを必要とする方たちを受け入れる。 「日本では、成育環境に恵まれなかった子どもが大人になったあとの支援が足りず、急に社会に放り出されてしまう。そうした人たちを長期的な視野でゆっくりと支援していく拠点をつくりたいと思ったのです」と話す川口さん。「支援団体につながり支援制度を使っても、非正規雇用などにしか就職できず、結局また困窮状態に陥るリスクがある。『再路上化』を断ち切っていく支援を、しっかり考えていけたらと思っています。」認定NPO法人 Homedoor大阪市北区本庄東1-9-14TEL:06-6147-7018/info@homedoor.org「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくる」をビジョンに掲げ、大阪市でホームレスの人々の路上脱出をサポートする認定NPO法人「Homedoor」(ホームドア)。理事長の川口加奈さんに、これまでの取組みと新たなチャレンジについて聞きました。理事長 川口加奈さん── 認定NPO法人 Homedoorゆっくりと相談者に寄り添う、就労・生活支援付きの「アンドベース」を新設近畿ろうきんPO Report 2N

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