ろうきん SDGs Report 2024
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つむぐ・いまここでは、24時間365日支援が必要な方とその家族を支えている。 在宅支援を続けながら、「一泊二日でもお子さんを預かり、親の負担を減らしたい」と考えていた宮田さん。法人設立時に融資を利用した九州ろうきんとは、短期入所事業の立ち上げに向けた相談を継続していた。短期入所は、「知らない場所に子どもを預ける不安から、親御さんが利用をためらう」現状があるという。そしてコロナ禍で、「安心して避難できる場所」の必要性も浮き彫りになった。 そこで、2024年5月、九州ろうきんと日本政策金融公庫の融資を活用し、『短期入所事業所RITA』(6床)を開所。熊本地震や九州北部豪雨の経験から、人口呼吸器装着者の広域避難所となる「電気を切らさない施設」をめざし、太陽光発電と蓄電池も備えた。 「私たちの一番の強みは、普段の様子を知る職員が一緒に泊まること。親御さんが安心して自分の時間や人生を過ごすことにつながる」と宮田さん。中川さんも、「短期入所は、難病やがんの終末期医療の方、在宅での看取りの一時休息場所にも対応します。介護者の方が少し疲れた時に、利用して休むことで、ご本人が最期まで家で過ごせる、そんな場所になりたい」と夢を語る。宮田さんは、その先の未来を見つめる。 「この事業所は、増設を見据えて計画しています。親亡きあとに行き場のない子どもたちをどう支えるかは、本当に大きな課題。その一助になれるよう、事業を展開していきたいです。」※1 口から栄養を摂取するのが難しい人のために、胃に穴を開け、直接栄養を届ける医療措置※2 〔児童福祉法〕重度の知的しょうがいおよび重度の肢体不自由が重複している児童(者)※3 筋萎縮性側索硬化症の略九州労働金庫 事業部 福祉金融推進課NPO法人 糸 ●訪問看護ステーションいまここ ●訪問介護つむぐ● 短期入所事業所 RITA(2024年5月開所)熊本市北区楠7丁目4−32理事長 宮田さん完成した短期入所事業所。災害時の拠点となる太陽光発電や蓄電池を備える。理事 中川さん14 NPO法人 糸は、在宅支援の勉強会で出会った介護福祉士・社会福祉士の宮田さんと、看護師の中川さんが、一般的なヘルパー事業所では対応できない医療的ケアが必要な重度しょうがい児者とその家族の支援を目的に、2019年に設立した。 「人工呼吸器や胃ろう※1、たんの吸引等の医療措置が必要な方や重症心身しょうがい児者※2、難病(ALS※3など)の方は、医療だけ、介護だけでは対応が難しく、取り残されてしまう。そこを何とか支えたかった」と語る宮田さん。中川さんも、「在宅ケアの方は、ご家族が看られなくなると行き先が病院しかなく、細かなケアが難しい。病院以外の選択肢をつくりたかった」と振り返る。しょうがい者のヘルパー事業所(市内約80カ所)のうち、医療的ケアを提供するのは8カ所ほど。その中で法人内に「訪問看護ステーション」を持ち、ヘルパーの指導ができる看護師を置くのは「糸」だけだ。24時間の電話対応体制を整え、医療依存度の高い方に対して在宅での支援を行う。 設立時から力を入れているのが、家族への支援(レスパイトケア)だ。『訪問介護つむぐ』は、現在13歳〜42歳までの15名が利用するが、「ご家族は24時間365日、少し目を離したら消えてしまうかもしれない命と向き合っています。私たちが入ることで、他の兄弟や家族と過ごす時間が生まれ、介護者が自分の時間を確保できる」と宮田さんは話す。「例えば、お子さんが風邪を引くと入院しかなく、お母さんら家族が付き添いで家を空けるのが当たり前だった家庭には、点滴などの医療措置を在宅で提供できるようになった。体調を崩しても、いつもと変わらない日常を過ごすことができる。たくさんの感謝をいただき、これが一番の功績です。」お預かりした資金の一部は、働くことや暮らしの安心を支えるソーシャルセクターへの融資・助成・寄付に活用されています。 九州ろうきんはNPO法人 糸の理念である「地域で自分らしくのその先へ 『家庭丸ごと』支援する」に共感し、地域社会の課題解決という目標のもとに福祉金融機関としての役割が発揮できたと思います。 今後も団体への寄り添った活動を実施していきます。対応が難しく、取り残されてしまうニーズ医療と介護福祉が一緒になって支える災害時避難先の機能も備えた「短期入所事業所」医療と介護福祉をつなぎ、しょうがいのある方とその家族を丸ごと支える―― NPO法人 糸熊本県熊本市で、「医療的ケア」が必要な重度しょうがい児者や高齢者等の訪問看護・介護に取り組むNPO法人 糸。ご本人とその家族を支える、医療と介護福祉が一体となった支援について、理事長の宮田稔大さんと理事の中川香織さんに聞きました。NPOREPRT

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